神明クリニック

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コラム(2011年)

12月号マイコプラズマ肺炎について
11月号尿管結石について
10月号鉄欠乏性貧血について
9月号片頭痛と緊張型頭痛について
8月号むずむず脚症候群について
7月号腸管出血性大腸菌について
6月号関節リウマチについて
5月号C型肝炎について
4月号放射線障害について
3月号漢方薬について
2月号私のダイエット法
1月号肺炎球菌ワクチンについて

マイコプラズマ肺炎について

近年に例をみないほどマイコプラズマ肺炎が流行しています。感染情報センターの報告によると、9月末頃から急に患者さんの数が増えており、例年晩秋から春にかけて患者さんの数が増える傾向にあることを考えると、この流行はまだしばらく続きそうです。

かつてはオリンピックが開かれた1984年と1988年に流行がみられたため、オリンピックの年に4年周期で流行すると言われていたのですが、最近は大きな流行がみられていませんでした。言い訳になりますが、私もすっかり油断していました。今になって思えば9月末頃から長引く咳を訴える患者さんが結構来院されていたような気がします。後の祭りですね。

さてマイコプラズマ肺炎についてですが、マイコプラズマはウイルスと細菌の中間に位置するような微生物であり、人に感染すると風邪のウイルスと違って、下気道すなわち気管支や細気管支、肺胞でも増殖するため、肺炎を起しやすい特徴があります。ただ感染しやすい訳ではなく、子供同士などの濃厚接触が主な原因とされています。
潜伏期間は2~3週間で、初発症状は発熱や頭痛、倦怠感のみのことも多いようで、その後に咳などの呼吸器症状が出現し、特に咳は長く続きます。
診断は主に血液検査でマイコプラズマに対する抗体を調べるのですが、発病初期には信頼性に乏しく、また正確な診断をするためには1週間以上かかってしまいます。ですから私の拙い経験ではありますが、早期に診断するためには、まず症状からマイコプラズマ肺炎を疑うこと、そして胸部のレントゲンを撮影することだと痛感しています。

治療は抗生剤が有効なのですが、種々の抗生剤の中でマクロライド系などの特定の抗生剤しか効きません。抗生剤であればなんでも効くわけではないのです。ですから私たち医師にとってはまずマイコプラズマ肺炎を疑い、そして有効な抗生剤を処方することが重要です。一般的には軽症な肺炎なのですが、時に重症化することもあり、また髄膜炎などの合併症も起こることがあります。
また感染して得られた免疫は一生続くわけではないため、再感染も起こります。過去にマイコプラズマ肺炎に罹ったからといって安心はできません。発熱の後、咳が長引く場合は皆さんもマイコプラズマ肺炎を疑ってみて下さい。

いきいき生活通信 2011年 12月号

尿管結石について

先月、元民主党代表の小沢一郎さんが尿管結石で入院されました。幸い結石は自然と排泄されたようですが、これまで尿管結石を何度も経験している私としては、さぞかし痛かっただろうなと同情します。

さて尿管結石についてですが、私が初めて経験したのは医者になって1年が過ぎようとしていた頃です。休みの日に同僚と夜遅くまでお酒を飲んで、自宅に帰ってすぐに床に就いたのですが、明け方に突然じわじわと左の下腹部から背部にかけて痛みを感じ、次第に強くなり、まさに七転八倒の状態となりました。
恥ずかしいことに何が起こっているのか自分で診断出来ず、痛みと格闘しながら救急車を呼ぼうかどうか迷っていたのですが、3時間ほど経過したところで痛みがすっと消えていきました。

念のため、朝早く病院で診てもらったところ、「おそらく尿管結石だろう」と言われ、“そうか、これが尿管結石か”と感動?したのを覚えています。
私の場合のように、普段から塩分や動物性の蛋白質を多く摂取していると、尿中のカルシウムやシュウ酸、尿酸が増加します。就寝中の尿は濃縮されるので、シュウ酸カルシウムや尿酸が結晶化しやすくなり、結石となるわけです。
この結石が尿管内で尿の流れを阻止すると尿管内圧が上昇し、痛みとして自覚されます。結石が4mm以下であれば自然に排泄されますので、私のようにすっと痛みが消えます。

しかし結石が大きくて自然排泄されない場合は治療が必要です。尿管内圧が上昇すると尿の生成が止まり、内圧の変化が無くなりますので痛みは軽減するのですが、この状態をいつまでも放置していると腎臓の機能低下や感染が起こりやすくなるためです。治療は結石の位置や大きさで異なりますが、骨盤より上にある大半の結石は体外より衝撃波を当てて結石を破砕するESWLという治療が行われます。

一方、骨盤内にある結石は尿道から内視鏡を挿入して結石を破砕します。また健診などで腎臓結石が偶然みつかることがありますが、大きな結石(1cm以上)はESWLや場合によっては手術することがあります。また小さな結石は経過観察となりますが、いずれ尿管に落ちる可能性が高いので注意が必要です。
皆さん、尿管結石は予防が大切です。普段から食塩および動物性の蛋白質の過剰摂取や就寝前の食事を控え、水分を十分にとるように心掛けましょう。

いきいき生活通信 2011年 11月号

鉄欠乏性貧血について

私は中学一年生の時に初めて立ちくらみというものを経験しました。
初めはいったい何が起こったのだろうかと思いましたが、それから頻回に立ちくらみが起こるようになり、次第に持久走が苦手になり、やがて部活動の練習にもついていけなくなりました。自分だけ根性がないのかと思って、養命酒のようなものを飲んだりしながら数ヶ月間頑張ったのですが、さすがに毎日が辛くて近くの医院で診てもらったところ、「貧血がひどくて、ヘモグロビンが正常の半分ぐらいしかないね」と先生に言われました。1ヶ月間通院して鉄剤の注射をしてもらったのですが、私は立派?な鉄欠乏性貧血だったわけです。

鉄欠乏性貧血は文字通り鉄が不足することで起こる貧血で、皆さんも馴染みがあるでしょう。体の中の鉄分が不足するとヘモグロビンが十分につくられなくなります。ヘモグロビンは赤血球の中に含まれていて、酸素を結合して全身に運んでいく重要な働きがありますので、鉄が不足すると最終的には酸素不足の状態になって、動悸や息切れなどの症状がみられるようになります。
鉄欠乏の原因は主に

  • ① 鉄分の摂取・吸収不足
  • ② 鉄分の喪失
  • ③ 鉄分の需要の増大

の三つの場合に分けられます。
①は極端な偏食や胃切除後などによる吸収障害、②は月経過多(子宮筋腫など)、慢性的な出血(胃潰瘍や胃がん、大腸がん、痔など)、大量の発汗(汗にも鉄分は含まれています!) ③は成長期や妊娠などです。
私の場合はこれら三つ、すなわち偏食、発汗そして成長期が重なったためではないかと勝手に思っています。

これらの原因の中で特に重要なのは胃がんや大腸がんなどの悪性疾患です。たかが貧血だと思って侮ってはいけません。実際に私の拙い経験においても鉄欠乏性貧血をきっかけに胃がんや大腸がんを見つけたことが何度もあります。ですから40歳を過ぎたら年に2回ぐらいは血液検査をするべきではないかと私自身は思っております。

最後に治療ですが、鉄分の多い食事(レバーなど)を摂取するだけでは不十分なことが多く、鉄剤の内服が必要になります。また吐き気や胃痛などの副作用のため内服できない場合や早く治したい場合は静脈注射を行なうこともあります。
皆さん、貧血の陰に癌が隠れているかもしれませんので、注意して下さい。

いきいき生活通信 2011年 10月号

片頭痛と緊張型頭痛について

私の妻は頭痛もちのため、度々頭痛や肩の凝りを訴えています。大変つらいようで、随分前からマッサージチェアーを買って欲しいと言われているのですが、我が家では未だに実現しておりません。実現しない理由はもしかすると、私が原因かもしれません。幸いなことに私は二日酔いの時を除いて頭痛はほとんど経験したことがないのです。
しかし、世の中には頭痛もちの方はたくさんおられるようですね。慢性の頭痛のほとんどは片頭痛か緊張型頭痛と言われるものです。
ではその違いを簡単にお話します。

片頭痛は若い女性に多くみられ、片側のこめかみや眼を中心に、ズキンズキンと血管が拍動するような強い痛みで、体を動かすと増悪します。頻度はさまざまですが、平均的には月に一回程度で起こり、数時間から長い時には2~3日持続します。そして必ず何らかの随伴症状(吐き気や嘔吐、光や音に対する過敏など)を伴い、また20%程度の方で前兆(目の前がチカチカしたり、視界が曇ったりなど)がみられます。
原因は多岐にわたるようで、食物(チョコレートやチーズ、アルコール、カフェインなど)、天候(高湿度や気圧、天候の変化など)、睡眠不足やストレスなどが誘発因子と考えられており、これらを誘因(誘因なしに起こることもあり)として三叉神経の炎症や血管の拡張が起こることで、痛みが発生するとされています。対策としては安静にして、患部を冷やすことが有効です。

一方、緊張型頭痛は中高年の男女にみられ、両側性に後頚部から後頭部、頭頂部にかけてギュッと締め付けられるような痛みで、体を動かすことで軽減します。頻度は時々から毎日起こる場合まで様々であり、典型的には4~6時間持続します。随伴症状はよくみられ、肩凝りやフワフワしためまい感などが特徴的です。片頭痛と同様に睡眠不足やストレス、その他、肩が凝るような姿勢、空腹なども原因となり、これらが誘因となって、筋肉の緊張をもたらし、脳へ過剰な痛みの信号を伝えるとされています。
対策はストレッチなどで体を動かし、患部を温めることです。片頭痛とは正反対ですね。

皆さんの頭痛はどちらの頭痛でしょうか。是非、参考にして下さい。

いきいき生活通信 2011年 9月号

むずむず脚症候群について

診察室での一コマ)
患者さん:「先生、夜寝ようとしたら、脚がむずむずして眠れないのですが」
先生:「特に異常はないので、安定剤を処方しますからこれで様子をみて下さい」
あるいは「末梢神経の障害ですので、ビタミン剤で様子をみて下さい」

こういった患者さんとお医者さんとの診察室でのやりとりは数年前まではよくみられたのではないかと思います。恥ずかしながら私もそういう対応をしていた医者のひとりです。
皆さんはむずむず脚症候群という疾患を耳にしたことがありませんか。最近、テレビなどでよく報道されるようになっているので、ご存知の方も多いでしょう。欧米での患者さんの数は1000万人以上と推定されており、日本でも人口の3~4%にみられるそうで、決して稀な疾患ではありません。ただ日本ではこの疾患自体の認識が普及していなかったため、これまで不眠症や末梢神経障害などと診断されることが多々ありました。そのため苦しい思いをした患者さんもたくさんおられたかと思います。この疾患、病名はユニークなのですが、当の患者さんはとてもとてもつらいようです。

主な症状は「むずむずする」「じっとしていられない」「虫が這っているような」「火照るような」などと表現される異常な感覚が下肢を中心に時には腰から背中や全身にかけて出現します。
しかもこれらの症状は安静時、特に夜間寝床に入ってから最も出現しやすく、そのため睡眠が十分とれず、日常生活に支障を来たします。原因は不明ですが、神経伝達物質であるドーパミンの機能低下により脳へ誤った情報が伝えられることで、不快で異常な感覚を感じるようになるとされています。
またこのドーパミンの機能低下には鉄欠乏などが関連していると考えられており、実際に鉄欠乏性貧血の患者さんに多く、その他透析患者さんやパーキンソン病、糖尿病の患者さんなどにもみられます。

さて治療ですが、昨年1月に国内初となる治療薬「ビ・シフロール」が保険適応となりました。75%の患者さんで症状の改善がみられるとのことですが、私の拙い使用経験では、残念ながら著明な改善は得られていません。しかし多少は改善しているようですし、また著効する患者さんもおられるようですので、まずは試してみるべきだと思います。脚がむずむずしてつらい方は、医療機関で相談してみて下さい。

いきいき生活通信 2011年 8月号

腸管出血性大腸菌について

いよいよ夏の到来を迎えました。皆さん、この時期は熱中症や食中毒が増える時期です。命に関わることもありますので、十分に注意しましょう。

まだ記憶に新しいかと思いますが、今年の4月から5月にかけて焼肉チェーン店で起こった腸管出血性大腸菌O111による食中毒では165名の患者発生があり、そのうち4名の方が亡くなられました。実に気の毒な出来事でした。この度のニュースを見て私にはすぐに約20年前に埼玉県浦和市の幼稚園で発生した食中毒が思い出されました。井戸水が原因とされる腸管出血性大腸菌O157による食中毒で、2名の園児が亡くなりました。胸苦しくなるようないたたまれない気持ちになったことを今でも覚えています。
この時初めてO157という言葉を耳にして、以来私の記憶に深く刻み込まれました。

そもそも大腸菌は家畜やヒトの腸内にも存在しており、ほとんど無害なのですが、一部の大腸菌がヒトにとって有害なのです。大腸菌は菌の表面にあるO抗原とH抗原によって細かく分類されており、例えば、O111やO157はそれぞれ111番目と157番目に発見されたO抗原を持つ大腸菌ということです。

これらの大腸菌はベロ毒素と呼ばれる毒素を産生することがあり、時にこの毒素が身体の中で様々な障害を引き起こすと、重篤な状態(溶血性尿毒素症候群や脳症)に至ることがあります。主な感染原因は牛肉を生や加熱不足で食べた場合ですが、生野菜などによる感染事例もあり、また病原性が強いためヒトからヒトへの二次感染も起こることがありますので、要注意です。
潜伏期は3~5日で、症状は全くない場合や非常に軽い場合もありますが、頻回の水様性下痢、激しい腹痛、そして著しい血便(出血性大腸炎)を来たすことが特徴です。治療は水分補給および食事療法、抗生剤による治療が中心となりますが、重要なことは重症化を予測することであり、特に幼児や高齢者、血便や腹痛が激しい場合は重症化の危険性が高くなりますので、注意が必要です。

腸管出血性大腸菌による食中毒は毎年10~30件ほど報告されており、決して稀な食中毒ではありません。O111もO157も熱に弱く、75℃で一分間加熱すれば死滅しますので、通常の食中毒対策(食品の購入、保存、調理など)を確実に実施することで、予防可能です。感染は外食時だけとは限りません。
家庭でも起こりますので、夏場は特に食中毒には気を付けて下さい。

いきいき生活通信 2011年 7月号

関節リウマチについて

皆さんはリウマチという病気をよく耳にしたことがあるでしょう。外来でも時折「リウマチの検査をしてほしい」と言われることがあります。
リウマチは関節が痛くなったり変形したりする病気なのですが、以前はこの関節破壊はゆっくり進行すると考えられていて、治療も副作用の少ない薬から始めて次第に強い薬に変えていく治療が行われていました。しかし、リウマチの関節破壊は発症早期に進行することが明らかになり、治療も早期にリウマチの活動性をしっかりと抑えることが、その後の関節破壊を防ぐために重要であると認識されるようになったのです。このようにリウマチの診療は近年飛躍的に向上しています。

さて関節リウマチについてですが、男性よりも女性に多く(約3倍)みられ、原因は遺伝的な影響やウイルスなどの感染が考えられていますが、はっきりとはわかっていません。いずれにしろ免疫系に異常が生じ、自身の関節内面を覆っている関節滑漠にリンパ球などの血球が集まり、サイトカイン(TNFαなど)と呼ばれる炎症性物質を産生することで、関節滑漠に炎症が起こります。すなわち自分自身で自身の関節滑漠を攻撃するという自己免疫疾患なのです。手指や足、手首、肘、膝などの関節が次第に腫れて痛むようになります。

ちなみに手の指先の関節(遠位指節関節)の痛みを訴える方も多いのですが、これはヘバーデン結節といわれるもので、加齢が関係しており、リウマチとは違います。

リウマチでは初めはひとつの関節から炎症が始まりますが、いずれは左右同じ部位に起こってきます。また朝の手のこわばりも1時間以上続くことが多く、これらの症状は天候(雨や寒冷)などで増悪します。
炎症が続くとやがて関節は破壊されて変形し、硬直してきます。こうなると生活への支障も大きくなります。

診断は主に症状と血液検査によってなされますが、時に難しい場合もありますので注意が必要です。リウマトイド因子や抗CCP抗体などの自己抗体の検出も全てのリウマチ患者さんで陽性になるわけではありませんが、診断的意義は大きいです。
治療は抗リウマチ薬と言われる免疫を抑制したり調整したりする薬や、先ほど述べたサイトカインのひとつであるTNFαの働きを抑制する薬、そしてステロイド薬などで、関節の変形を来たさぬためには、これらの薬を早期に使用することが重要です。

皆さん、朝のこわばりや関節の痛みが続く場合は関節リウマチの疑いがありますので、一度は病院を受診して下さい。

いきいき生活通信 2011年 6月号

C型肝炎について

今からほんの40年前の頃ですが、輸血に伴って起こる肝炎が注目されていました。病原ウイルスは長らく不明でしたが、約23年前にその病原ウイルスが同定され、そしてそのウイルスはC型肝炎ウイルスと名付けられました。
ようやく輸血による感染を防げるようになったのは約20年前で、私が大学病院で研修医をしていた頃です。その頃はC型肝炎の患者さんも多く、私が肝臓疾患で初めて受け持ちになった患者さんもC型肝炎の患者さんでした。C型肝炎ウイルスは遺伝子の配列によって6種類に分類されるのですが、約70%の患者さんは1b型というタイプで治療に反応しにくいタイプです。

C型肝炎の患者さんはその当時、抗ウイルス作用のあるインターフェロンという薬で治療していましたが、副作用が多く、つらい治療であり、そして効果は低く、治癒することは稀でした(1b型でウイルス量が多い場合:ウイルス排除率約5%)。
したがって肝炎が持続することで肝硬変へと進み、最終的には肝臓癌を発病することも多く、実際にそのような患者さんはたくさんおられました。

そのような状況の中で肝炎の治療も肝臓癌の治療も少しずつ進歩してきたのですが、約10年前にウイルスの増殖を抑制する薬(リバビリン)がインターフェロンと併用されるようになり、ウイルス排除率も5→20%に高まりました。そして7年前には持続性のあるペグインターフェロンが使用されるようになり、今ではこのペグインターフェロンとリバビリンの併用治療をしっかり受ければ、50%以上の患者さんで、C型肝炎ウイルスを体から排除できるようになりました。そして今年度中には新たな薬がC型肝炎の治療に加わる予定であり、治療成績は更に上がると予想されています。

C型肝炎はこれまで治りにくい病気で肝臓癌が起こりやすいというイメージがありましたが、今では積極的に治療すれば治る可能性も十分にあると言えるでしょう。本当に医学の進歩には驚かされますね。

現在国内にはC型肝炎ウイルスの感染者は約150~200万人いると推測されていますが、この中には感染に気付いていない方も相当数いると思われます。皆さん、市検診などを利用して、一度は感染しているかどうかの検査をして下さい。そして感染していれば定期的に検査をきちんと受けて、治療の必要があれば医療費助成制度もありますので、積極的に治療を受けて下さい。

いきいき生活通信 2011年 5月号

放射線障害について

東北地方太平洋沖地震後に連日テレビで流された映像はあまりにも凄まじくて、言葉になりません。ただ、今もまだ闘っている人達、そしてこれからも闘い続ける人達が大勢います。この状況の中で私達ができることは何なのか?答えを探しながら、この文章を書いています。
私は原子力発電についてあまりに無関心でした。是非についてはともかく、その脅威については職業柄多少なりとも心得ているつもりなのですが、全く安心しておりました。

そもそも放射線は自然界にも存在していて、大気中や大地、食物にも存在しています。普通に生活していても私達は自然放射線に常にさらされているのですが、この程度の放射線では人体に特別な影響はありません。またこの放射線を出す能力を「放射能」、放射能がある物質を「放射性物質」と呼びますが、福島原発から漏出したヨードやセシウムなどが放射性物質であり、放射線を放出しています。これらの放射線を体外から浴びたり(外部被曝)、また放射性物質が体内に入って体の中で放射線を出すこと(内部被曝)によって被曝が起こります。ある程度の放射線に被曝すると、私達の細胞は損傷を受けるのですが、軽度の損傷であれば細胞はその損傷を修復することができます。

しかし修復が不可能な場合は異常な細胞のまま分裂を繰り返したり、あるいは細胞そのものが死に至ります。分裂の盛んな細胞(血液細胞や皮膚細胞、腸の細胞、生殖細胞など)はこのような影響を受けやすく、逆に肝臓や筋肉、脳などの分裂をほとんど起さない細胞は影響を受けにくいと言えます。
では異常な細胞が分裂・増殖を繰り返すとどうなるでしょう。やがては癌になったり、あるいは遺伝的な影響がでるしょう。一度に大量の細胞死を起こすとどうなるでしょう。その細胞によって形成されている器官は機能しなくなるでしょう(皮膚の損傷や白内障、不妊など)。

私達はこの度の震災で放射線の怖さを痛いほど思い知り、また同時に原発による恩恵(電力供給)も強く意識することとなりました。人の知恵は将来きっとこの問題を克服してくれるだろうと信じています。
先日歌手のさだまさしさんがおっしゃっていました。元気な人は元気でいよう、そしてみんなで復興を目指しましょうと。

いきいき生活通信 2011年 4月号

漢方薬について

昨年10月中旬からのインフルエンザワクチン接種に始まり、ワクチン接種と入れ替わるようにインフルエンザの流行を向かえ、そしてようやくそのインフルエンザの流行も春の訪れとともに、終息に向かっています。少しばかり肩の荷が下りた感じで、ほっとしています。
毎年春になるとエネルギーに満ち溢れた草木に感心するのですが、少しは私たちもこの春の草木にあやかりたいものですね。

さて今回は漢方薬についてお話してみます。
私は普段の診療ではあまり漢方薬を処方していません。理由は恥ずかしいことに漢方薬の処方にあまり慣れていないからで、知識も経験も不十分ということです。これではいけませんね。現状は患者さんから「この漢方薬はよく効きますよ」と教えていただいているような状況ですが、少しずつ処方経験のある漢方薬の種類が増えています。

漢方薬は皆さんご存知のとおり、複数の生薬(天然に存在する薬効をもつ産物:主には植物で、その他動物や鉱物由来のものがあります)を組み合わせた薬で、組み合わせる生薬の種類や量によって多くの漢方薬があります。

本来はこれらの生薬の成分を抽出するために、煎じて飲む必要があるのですが、現在使われている漢方薬の多くは既に成分を抽出し、製剤化されたもの(エキス剤)であるため、煎じる必要がありません。
飲み方は一般的には食前か食間の空腹時に白湯(さゆ)で飲むことになっています。空腹時に白湯で飲む理由は漢方薬の吸収を良くするためですが、食後に水で飲んでもさほど問題はありません。
また漢方薬の利点として副作用が少ないことがあげられますが、多くの漢方薬には甘草(カンゾウ)が含まれているため重複して漢方薬を飲む場合は注意して下さい。血圧が上がったり、電解質の異常(偽性アルドステロン症)が起こることがあります。

効果については同じような症状の患者さんでも千差万別です。それが漢方薬の良いところでもあり、また難しいところでもあります。患者さんの体質や体形を見極めて、その患者さんにあった漢方薬を選ぶことが最も重要なのです。ですから同じ症状であっても患者さんによって処方する漢方薬は違うのです。私の浅はかな経験においてもこのことは何度も実感しました。適切に使用すれば、体調や体質を改善し、著効することがあるのです。

皆さん、長くお困りの症状があれば、漢方薬を一度試してみてはいかがでしょうか。

いきいき生活通信 2011年 3月号

私のダイエット法

年が明けて早くも一ヶ月が過ぎました。まさに"光陰矢のごとし"ですね。この正月は久しぶりに休ませて頂き、ゆっくりすることができました。しかし気がつくと明らかにおなかの周りが大きくなって、ズボンがまた一段ときつく感じるようになりました。やれやれ、どうやらこの正月で2~3kgは体重が増えたようです。増えたものは全て脂肪だと断言できるところがまた悲しいですね。

私のことを例にしますと、体重だけで判断すると極軽度の肥満程度なのですが、この20年あまりの運動不足が原因で、筋肉量が減り、体脂肪率は見かけ以上に高いのです。脂肪が増えると脂肪細胞から体に悪いホルモンがたくさん分泌されるようになり、逆に体に良いホルモンの分泌が低下します。
その結果、血圧や血糖が上昇したりして、動脈硬化が進行し、血管は詰まりやすくなります。特に内臓脂肪が多いとこの傾向が強くなります。いわゆるメタボリックシンドロームの状態です。

内臓脂肪が多いと自覚している私は数年前から何とかせねばと思っているのですが、元来濃い味付けが好みのためか事態は一向に改善されず(むしろ悪化している気がします)、ただ月日が流れていくばかりでした。

ところが、最近になって変化が起きてきました。
なんと我が家の食卓にもついにあの"タニタの社員食堂"のメニューが登場するようになったのです。
ご存知の方も多いと思いますが、少し説明しますと、タニタというのは体脂肪計などを製造・販売している会社で、その会社の社員食堂で実際に提供されている食事のレシピを掲載した料理本がベストセラーになっているのです。
我が家では先月から、月~金曜日の夕食にこの料理が登場しています。カロリーは一食500~600キロカロリーなのですが、驚いたことに、不思議と空腹感を感じません。まだ一ヶ月ほどしか経過していませんが、おなか周りが少しすっきりしてきて、体重も減ってきています。
栄養のバランスも良く、健康的にダイエットできそうで、これなら続けられそうですよ(ただし私が料理を作っているわけでありませんが)。
ダイエットでお困りの方は是非、試してみて下さい。

いきいき生活通信 2011年 2月号

肺炎球菌ワクチンについて

肺炎は身近な疾患であり、私の外来でも時々治療することがあります。
治療可能な疾患ではあるのですが、それでも毎年多くの方が肺炎で亡くなっています。そのほとんどが65歳以上の高齢者です。

肺炎の原因菌にはマイコプラズマや肺炎球菌、インフルエンザ菌などいろいろとあるのですが、70歳以上の肺炎では肺炎球菌が一番多い原因菌です。したがって高齢者においてこの肺炎球菌による肺炎を予防することは非常に重要なのです。

日本では1987年からこの肺炎球菌に対するワクチン(ニューモバックス)が接種可能なのですが、費用が全額自己負担だったこともあり、これまで接種される方はほとんどおられませんでした。しかし、最近ではこのワクチンの接種意義についての理解が各自治体で深まり、公費助成がなされるようになってきています。明石市でも70歳以上の方には3,500円の一部助成が受けられます。ですから皆さん70歳になれば是非、このワクチンの接種を検討してみて下さい。

ワクチンについてもう少し説明しますと、このワクチンは一度接種すると約5~8年効果が持続し、5年経過すれば再接種が可能です。そして重篤な副作用はほとんどなく、安全なワクチンといえます。

ただし、よく誤解されることなのですが、このワクチンは全ての肺炎に有効なわけではなく、肺炎球菌による肺炎(高齢者の肺炎全体の約30%)にのみ有効です。また肺炎球菌は90種類以上のタイプに分類できるのですが、ワクチンに含まれているのはこのうちの23種類のみです。しかし、この23種類だけで肺炎球菌による肺炎の約80%を占めていますので、心配ありません。海外の臨床データでは入院や死亡のリスクを十分に減少しうるなどの報告が幾つもあり、ワクチンの効果については信頼できると思います。
近年、抗生剤が効かない耐性菌も増えてきており、その点においてもワクチン接種の意義があると思います。

尚、小児科で接種している肺炎球菌ワクチン(プレベナー)は大人用(ニューモバックス)とは違うもので、小児において髄膜炎や敗血症などの重症感染症の原因になる7種類の肺炎球菌の成分が含まれたワクチンです。

いきいき生活通信 2011年 1月号