神明クリニック

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コラム

神戸新聞・折込の、地域の広報にあります「とことん、おおくぼ Okubo.com」の「ドクター西原のいきいき生活通信」で掲載された内容です。ぜひ皆様の生活にお役立てください。

5月号新型コロナウイルスの変異株について
4月号ピロリ菌の最近の話題について
3月号新型コロナウイルスワクチン“コミナティ”について
2月号認知症の「共生」と「予防」について
1月号コロナワクチンについて

新型コロナウイルスの変異株について

競泳女子の池江選手が先月の日本選手権に出場し、見事に東京五輪の代表権を獲得しました。自身が白血病であることを公表したのが2年3か月前で、すぐに入院して治療を受けられ、退院したのが1年6か月前。その間、急性リンパ性白血病に対して、強力な化学療法はもとより造血幹細胞移植も受けられています。移植後はさまざまな制限や注意事項があり、そして免疫抑制剤を中心とした多くの薬を服用することになりますので、精神的にも体力的にも通常の生活に戻るまでにかなりの時間を要します。こんなに短期間で競泳のオリンピック代表に選ばれることはまさに異次元の出来事です。

東京五輪開催には賛否両論ありますが、私は十分な対策を講じた上で、ぜひ開催してほしいと思っています。そして、私達に、世界中の人々に少しでも元気を与えてほしいです。

一方、新型コロナウイルスについては大変な状況になってきていて、変異株の感染が拡大していています。そもそもウイルスは自身で増殖することができないので、何とか人に感染して、その人の体内で増殖し、そして別の人へと感染を繰り返すことで、自らが生き延びていきますので、ウイルスも必死なのです。増殖する際には自己の遺伝子が複製されるのですが、一定の確率でミス(変異)が起こります。その変異が自身の生存に有利であれば、その変異したウイルスが従来のウイルスに比べて優勢になっていきます。したがって新型コロナウイルスが変異することは想定の範囲内であり、また変異したウイルスの感染力が強くなることも合点がいくわけです。

現在、日本で感染が拡大している変異株もやはり従来型と比べて感染力が強いことが示されています。心配ですね。どうすれば良いのでしょうか。

致死率が約1.9%(インフルエンザは0.02~0.03%)であることを考えると、感染して免疫を獲得することは避けるべきで、やはりワクチンや治療薬がとても重要になると思います。現実的にはワクチンをできるだけ速やかに接種し、そして変異株だからといって特別なことをする必要はなく、これまで通り、3密を避けて、ソーシャルディスタンスを保ち、マスク・手洗いをして体調管理に努めることが大事です。

ワクチンによる免疫獲得は不完全かもしれませんが、要は重症化しなければ新型コロナウイルス感染症もそれほど心配することはありませんので、ワクチンによる重症化を防ぐ効果に私は期待しています。

いきいき生活通信 2021年 5月号

ピロリ菌の最近の話題について

グローバル化に警鐘を鳴らすかのような新型コロナウイルスのパンデミックですが、それでも人々が進む方向(ベクトル)は決まっているような気がしています。何事もポジティブに考えて日々過ごしたいですね。

さて、今回は皆さんにも馴染みのあるピロリ菌について、最近の話題を少し話してみたいと思います。1983年に世界で初めてピロリ菌が人の胃から分離培養されて以降、これまでにわかってきたことをまとめてみると①世界中の半数以上の人が感染している②主に上下水道が普及していない地域において、免疫が不十分な幼児期に汚染された水、食べ物、唾液などから経口感染する説が有力③萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの疾患と関連がある④除菌療法の成功率は二次除菌も含めると95%以上である。大雑把に要約するとこんな感じです。

衛生環境の改善や2000年に除菌療法が保険適応となったことから、今後はピロリ菌の感染率が低下し、胃がんの発生が減少すると考えられています。ピロリ菌の感染はまさに「百害あって一利なし」と思われるのですが、そうでもない話もちらほら。

まず、ピロリ菌にもアジアとその他の地域では毒性に違いがみられており、欧米で胃がんが比較的少ないのはピロリ菌の持つ毒性が弱いためであると考えられています。毒性の弱いピロリ菌は単なる常在菌の可能性もあるわけです。また、ピロリ菌感染によって脳卒中による死亡が減少するという海外での報告もあります。日本でも最近「自己免疫性胃炎」が注目されていて、この疾患はピロリ菌に感染していない人に多くみられる傾向があり、胃粘膜の萎縮を引き起こし、胃がんとも関連があると考えられていて、ピロリ菌感染とは対立的な関係にあることが示唆されています。

そして、胃がんの主要な原因がピロリ菌感染であることは明らかなので、除菌療法に大きな期待がかけられているのですが、除菌後も胃がんがしばしばみられていて、期待していたほどの効果ではないのが現実です。ピロリ感染から胃がんへの発生過程もいくつかのパターンがあると考えられていますので、除菌療法後も定期的に胃カメラを受けることが重要です。

一方、除菌療法の弊害ですが、逆流性食道炎や種々のアレルギー性疾患の増加などが指摘されていて、他の疾患への影響については研究中といったところです。私自身は除菌後の落ち着いた胃粘膜を何度も目の当たりにすると、胃の中にピロリ菌は不必要だと思っています。

いきいき生活通信 2021年 4月号

新型コロナウイルスワクチン“コミナティ”について

2月17日からファイザー社の新型コロナウイルスワクチン(コミナティ)の接種が始まりました。まずは特定の医療機関約100施設に勤務する医療従事者4万人に対して接種が行われ、続いてそれ以外の医療従事者500万人、4月以降に65歳以上の高齢者3600万人、その後基礎疾患のある人820万人、高齢者施設の職員200万人、そして最後に16歳以上(16歳未満は対象外)の一般の方々への接種となります。

ただし、ワクチンが順調に海外から輸入できればよいのですが、不確かな状況のようです。2月末の時点では私は3月中にコミナティを接種しているはずで、3週間の間隔で2回接種する予定ですが、少し遅れそうです。そして皆さんが心配している副反応ですが、私もちょっと心配です。それもそのはずで、このワクチンは世界初のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンで、これまでのワクチンとは随分違っているからです。

さて、その安全性についてですが、やはり他のワクチンと比べると副反応の頻度は多いようです。1回目より2回目の方が副反応は起こりやすいので、海外約4000例と日本約120例での治験時の2回目接種後7日間の副反応の発生頻度を記してみると、注射部位の疼痛(海外72.6%、日本79.3%)疲労感(55.5%、60.3%)頭痛(46.1%、44%)筋肉痛(33.5%、16.4%)悪寒(29.6%、45.7%)関節痛(20.5%、25.0%)発熱(13.6%、32.8%)と報告されていて、海外と比べて日本では悪寒、発熱が少し多いようです。

そして重篤な副反応であるアナフィラキシー反応ですが、昨年12月に米国で接種された約190万回のうち21例(100万回あたり11.1回)で検出されています。いずれも回復しているようですが、この結果は、およそ100万回に1.3回程度とされているその他のワクチンに比べると、少し多いように思いますので、十分な対策と注意が必要です。

肝心の効果ですが、まだ短期間のデータしかありませんが、海外での治験時およびイスラエルでのデータはほぼ同等で発症予防も重症化予防もおよそ89~95%前後ですので、効果は非常に高いと言えます。

ただし、不安点もちょっとだけ。ウイルスの変異によって効かなくなる可能性や、この効果がどのくらい持続するのか、また副反応についても遅発性の有害事象などは今後の情報を待たなければなりません。そして妊婦さんや授乳中の方については、接種する必要性が非常に高い場合のみ接種を考慮することになると思います。まだまだ安心できない状況ですが、少し光が見えてきた感じがしています。

いきいき生活通信 2021年 3月号

認知症の「共生」と「予防」について

「耐え忍ぶ」まさに今はそんな状況ですね。
新型コロナウイルスの感染防止に向けて2021年1月14日~2月7日の予定で兵庫県においても緊急事態宣言が発令されました。営業時間の短縮や外出自粛などの要請があり、街中の人の数も随分少なくなったように思います。1月末時点で、明石市内の感染者数にはまだ大きな変化はないようですが、これから減少してくるはずです。
そしてもうすぐ始まるワクチン接種の効果に期待して、何とかこの難局を乗り越えましょう。

さて話は変わりますが、最近、患者さんの名前を忘れてしまうことがあります。定期的に通院されている患者さんしかり、週に3回来院されている透析患者さんの名前でさえ、すぐにでてこないことがあって、ちょっと不安に感じている今日このごろです。
またクリニックも開院してから15年になりますので、長く通院されている患者さんに認知症の症状がみられてくることもしばしば経験します。皆さんの周りでも認知症はごくありふれた疾患になっているのではないでしょうか。

実際に認知症の人の数は年々増えていて、4年後の2025年には約700万人に達すると推計されていて、これは高齢者(65歳以上)の5人に1人が認知症ということになります。すなわち、私もあなたも、そして家族も含めて誰もが認知症になる可能性があるということです。

こうした状況の中、2020年に国は認知症への今後5年間の施策として、「認知症との共生」および「認知症の予防」ができる社会の実現を目指すこととしています。
「共生」は認知症になってもこれまで通り、案ずることなく、同じ社会で希望を持って生活しようということで、「予防」は認知症になるのを遅らせたり、その進行を緩やかにしようということです。認知症になることは避けられなくても、発症や進行は生活習慣や社会環境などで遅らせることができることが分かっています。

そして認知症の人が年々増えている中、その介護のために大変な苦労をされている家族の方も少なくありません。このことが大きな問題でもあり、本人や家族周囲の力、すなわち自助や共助ではどうにもならないことも多く、社会全体で支えていく仕組みをもっと充実させていく必要があります。

「共生」と「予防」はわかりやすくてその考えにも大賛成ですが、そのためには介護者や介護従事者への支援が重要かなと思っています。

いきいき生活通信 2021年 2月号

コロナワクチンについて

2020年はまさに“コロナ禍”な一年でした。当クリニックもいろいろと大変で、スタッフみんなが、こんな時こそ地域の医療に貢献したいという気持ちと、高齢者や透析患者さんが来院するクリニックにおいて、どこまでその診療に関わってよいのかという葛藤が常にありました。そしてその葛藤は今年も続きます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は現在進行形です。
気を引き締めて頑張りますので、本年もどうぞよろしくお願い致します。

さて、そのCOVID-19ですが、いつになったら終息するのでしょうかね。一般的なこととして、あるウイルス感染症が終息するためには、その集団の70%の人が抗体を持つことが必要であると言われています。したがって、70%の人が感染するか、あるいはワクチン接種によって免疫を獲得しないといけないわけですが、国内の感染者数は12月下旬時点で20万人前後であり、人口の0.2%程度です。70%の人が感染することは想像を絶するような事態ですので、これは何としても避けるべきで、治療薬がない状況ではワクチンだけが頼りになります。

そして、そのワクチンですが、現在世界では50種類以上のワクチンが開発中で、中国とロシアでは国内で作られたワクチンの接種が昨年夏よりいち早く始まっていて、特に中国製のワクチンについては中東やアジアでも接種されています。日本で使用される予定のワクチンについては、現在3種類のワクチンが確保されていて、そのうちの一つが先月、英国や米国などで緊急的に接種が始まりました。

このワクチンは新型コロナウイルスが持つたんぱく質の基になるメッセンジャーRNA(mRNA)を人工的に作製したmRNAワクチンで、臨床使用されるのは初めてのことであり、世界中で注目されているワクチンと言っても過言ではないでしょう。これまでのワクチンと比べて、有効性や安全性が高いと期待されています。

このワクチンをヒトに接種すると、mRNAが体内の細胞に取り込まれ、新型コロナウイルスが持つたんぱく質が産生・分泌されて、それが抗原として作用し、ウイルスに対する抗体が作られるわけです。また、ウイルスが感染した細胞に対しても抗体と関係なく免疫を発揮するとされています。効果については約43500人が参加した臨床治験で95%の予防効果があったとのことです。

初めてのタイプのワクチンですから、安全性については少々不安ですが、これらのワクチンが救世主となり、そして先進国だけでなく、世界中で接種されることを願っています。

いきいき生活通信 2021年 1月号